M&Aは日本国内でも件数が増加傾向で、メディアのニュースでの露出も増えてきています。特に上場企業のM&Aは大々的に報道されることが多く、企業の経営者はもちろん、一般人の目に止まる機会も多いと思います。大手企業のM&Aでは売り手側の財務面の解決だけでなく、企業買収に伴う事業拡大によって新たなインフラが整備されるといった、国民全体の生活に関わる話題も多いです。
本記事では日本でM&Aが積極的に行われている業界の事例を見ながら、話題性のあるM&Aニュースを具体的に解説していきます。中小企業の経営者には無縁な話題と思われがちですが、自社の経営を進める上で参考になる事例も多いです。また、M&A業界への転職を考えている方は必ずチェックしておきましょう。
日本のM&Aはなぜ増えている?
これまでの日本ではM&Aに関してネガティブなイメージを持つ経営者が多く、海外に比べると件数が少ないと言われていました。しかし、近年はM&Aが有効な経営戦略の一つとして広く認知され、多くの中小企業が活用するようになりました。特に会社の事業拡大を目指す経営者の立場から見ると、新業種への進出する際の人材やノウハウを獲得し、参入後のリスクを最小限に抑えられることから、多くの企業で活用されています。
また、近年は後継者不足に悩む中小企業の解決策としても大きな注目を集めています。日本の中小企業は少子高齢化が原因による後継者不足が大きな課題となっており、十分な業績をあげながらも廃業を選ぶ企業が増えていました。
しかし、M&Aを活用することで、自分が手塩にかけた企業を他の事業者に引き継いでもらうことはもちろん、売却益としてまとまった現金を手にすることができ、経営者の老後の生活費を工面することもできます。これらの要因が重なったことが国内のM&Aが増加傾向にある理由とされています。
M&Aのニュース
M&Aは日本国内だけに留まらず、世界中の企業が企業戦略の一つとして活用しています。特に大企業のM&Aはテレビや新聞などの多くのメディアで報道され、一般人を含めて大きな話題になっています。大企業のM&Aがニュースとして報道する背景には様々な要因がありますが、主に話題性のある企業が買収を行うケースや取引額が大きいといった理由があります。本章では日本のニュースでM&Aが頻繁に取り上げられる理由について解説していきます。
話題性のあるM&A
日本のニュースでは話題性のある企業のM&Aが取り上げられることが多いです。過去の事例と見るとライブドアやライザップといった話題性のある事業を行なっている企業や経営者のニュースが多く取り上げられています。話題性のある事業や経営者には同業他社の経営者だけなく、世間の関心も集まりやすく、必然的にそのM&Aも注目を集めることになるのです。
高額案件のM&A
大企業のM&Aでは、売り手側も買い手側も事業規模が多く、取引が高額になる事例も多いです。特に海外企業が関わるM&Aでは数兆円規模の事例も珍しくなく、世間からの大きな注目を集めることになります。また、大企業同士のM&Aでは、より大きな利益を確保するために様々なスキームが使われるため中小企業の経営者やM&A業界で働く人材からも関心を集めます。
業界全体に影響のあるM&A
大企業のM&Aは業界の再編のきっかけになる事例も多いため注目を集めやすいです。日本の国内市場はどの分野も縮小傾向と言われているため、業界再編のきっかけになる大企業のM&Aは大きな注目を集めます。特に同業他社の経営者から見ると、自社の業績にも大きな影響を与える可能性があるため、欠かせずチェックしたいニュースです。
業界別M&A
中小企業を中心に増加傾向と言われる国内のM&Aですが、全ての業界で積極的に行われているわけではありません。M&Aが積極的に行われている業界は、業界独自のノウハウが必要なケースや人材難を解決するために同業種の企業買収を決断するケースが多いと言われています。
M&Aの多い業界はニュースで取り上げられる可能性も増えるため、常にアンテナを張っておく必要があります。本章ではM&Aが積極的に行われている業界を具体的に解説していきます。
医療・介護業界
医療・介護業界は新規参入時の人材とノウハウの獲得にM&Aが活用されています。日本では少子高齢化が社会問題になっており、高齢者の受け入れ先となる介護施設や医療機関に対するニーズが年々増加していることから、新規参入を目指す企業が増えています。
しかし、これらの業界は専門的な資格を持つ人材やノウハウが必要不可欠であることから、M&Aを活用して既存の介護施設や医療機関を買収する事例が増えているのです。また、売り手となる企業側も受け入れている利用者の生活を守るために廃業の道を選びにくいことから、M&Aによる売却を検討するケースが多いと言われています。
物流業界
物流業界では人材難を解消するための手段としてM&Aが活用されています。コロナ禍による利用者の増加で、物流業界に対するニーズは年々高まっていますが、それに反比例するように人材難も加速しています。
物流業界の採用は就職先としての人気がないことから、常に人材難を抱えており、同業他社を買収することで新たな人材を確保するケースも増えてきています。また、中小企業の立場から見ると従業員の雇用の安定や財務基盤を安定するために大企業に売却を行う事例も多いです。
IT業界
IT業界では新サービスを開発する近道としてM&Aが活用されています。IT業界では優れた中小企業が新たなサービスやソフトウェアを開発することも珍しくなく、開発したサービスを普及させるための資金面の援助を期待し大企業に売却を行う事例も多いです。
買収する企業側は、新しい人材や技術を取り入れることで、提供するサービスを充実させるだけでなく、より安定してサービスを運用していくことができます。
M&Aで話題になったニュースの事例
日本国内では上場企業を中心に様々な企業のM&Aに関するニュースが話題になっています。それぞれの企業は様々な目的や思惑を持って企業買収や業務提携を行なっています。本章では近年話題になった大企業のM&Aを中心にニュースの具体例と目的を紹介していきます。
東芝の事例
日本の総合電機メーカーの大手として知られる東芝の再編では、国内の投資ファンドを中心に4陣営がM&Aに興味を示し話題となりました。東芝の再編を巡っては1次入札で10件の応募があったとされ日本を代表する電機メーカーであるだけに大きな注目を集めているようです。
ATグループの事例
トヨタ販売1号店として有名なATグループでは、創業家の山口社長が設立した特別目的会社が全株式の取得を目指したことで話題となりました。ATグループのM&Aを巡っては2021年の3月に社内全体で5000件を超える大規模な不正車検が発覚しているため、企業風土を改善する目的があるとされています。
アイスタイルの事例
コスメ・美容の総合サイトアットコスメを運営するアイスタイルは、米国amazonと三井物産の2社と業務資本提携を行なったことで話題になりました。アイスタイルはコロナによって業績が落ちているなかで、世界で最も影響力のある企業とも言われるamazonと業務資本提携を行い、amazonのオンラインストア内に専用ショップを開設し、業績の回復を目指します。
住友商事の事例
日本を代表する大手総合商社の住友商事は、ブラジルで農業資材の直販事業を行うNativa社を完全子会社化することを発表しました。Nativa社のM&Aを巡ってはブラジルで最大規模の農業資材の直販会社を買収することで、農業大国として世界的ニーズが高まると予想されるブラジルの農業分野での更なる事業拡大を目指します。
ソフトバンクの事例
日本を代表する電気通信事業を展開するソフトバンクは、情報通信技術を活用して海洋・海運産業の発展を目指すMarindows株式会社との業務提携を発表しました。Marindows株式会社とのM&Aの背景には、成長産業としての期待値が高い国内の海運産業に対して、情報通信技術を活用したより安全な船舶サービスの実現を目指します。
西日本電信電話の事例
日本を代表する電気通信事業社である西日本電信電話はカーシェアリングサービスを提供するREXEVとの業務提携を発表しました。REXEVとの業務提携の背景には、電気自動車の普及に向けての課題解決と、地球温暖化対策に効果があるとされるカーボンニュートラル実現に向けての事業開発が目的とされています。
伊藤忠商事の事例
日本を代表する大手総合商社の伊藤忠商事は、トラックやバスなどの商用車を販売するいすゞ自動車株式会社とのグループ体制の強化を発表しました。2社の業務提携では、伊藤忠商事の販路やノウハウを共有することで、国内のリース業や中古車流通事業を強化し、国内の商用車市場のニーズにより応えられる体制作りを目的としています。
M&A業界へ転職するにはニュースにアンテナを張る
M&A業界への転職を考えている方は、M&Aに関するニュースを常にチェックすることを心がけましょう。M&A仲介会社の採用試験では、業界への関心やM&Aによる企業の課題解決に関しての想いを問われるケースも多いとされています。
M&Aに関するニュースは、テレビやネットメディアはもちろん、新聞や経済誌でも積極的に取り入れられています。応募する企業に関係が深い分野はもちろん、業界内で話題になったM&Aのニュースに関しては常にアンテナを張っておくことが大切です。
M&A業界のニュースをチェックし、その動向を把握しよう!
日本国内では年々M&Aに関する需要が年々高まっており、大企業はもちろん、中小企業の事業承継問題の解決のために活用されています。M&Aを行う業界は医療・物流・ITが多いとされていますが、東証一部に上場する大企業の事例では、これら以外の分野以外でも国境の枠を超えて積極的に行われています。
M&Aに関するニュースはテレビやネットメディアでも積極的に取り上げられているため、業界で働く人はもちろん、転職を検討している方は必ずアンテナを張っておきましょう。