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中小企業が行うM&Aの実態!失敗しないM&Aの方法

日本の中小企業の中では近年M&Aが積極的に行われています。中小企業のM&Aは経営者の高齢化による企業承継はもちろん、買い手側の事業の拡大や多角化も主な目的にあげられます。また、近年はM&Aに対する経営者の認知度が高まったことによって、企業戦略の一つとして積極的に取り入れられるようになっているとも言われています。

本記事では大企業はもちろん、身近な飲食店や工場などでも検討されつつある中小企業のM&Aについて、具体的な理由やスキームなどを見ながら解説していきます。

目次

国内のM&Aは増えている?

日本国内のM&Aの件数は近年増加傾向と言われており、2000年には1600件前後だった件数が2019年には4000件を超えており過去最高を記録しました。中小企業のM&Aは公表されていない事例も多いことから、実際にはこれよりも多い数のM&Aが国内で実施されていると言われています。

また、中小企業のM&Aの支援を行う専門機関の事業引き継ぎ支援センターのデータを見ると2011年には250件だった相談件数が、2018年度以降は1万件を超えており、そのニーズが大きくなっていることがわかります。

中小企業がM&Aを行う理由とは?

中小企業がM&Aを行う理由には経営者の高齢化により後継者不足と、事業拡大のための成長戦略の2点があると言われています。特に近年は中小企業の経営者の高齢化が深刻になっていると言われており、M&Aが増加する大きな理由の1つとも言われています。

事業承継

中小企業のM&Aを行う理由として真っ先にあげられるものが事業承継問題です。社会問題としてたびたび取り上げられることになる少子高齢化の影響は中小企業の経営者も例外ではなく、60歳を超える高齢の方が増加傾向で後継者となる人材がいないことから、M&Aを検討することが多いです。

また、後継者がいる企業であっても事業を引き継ぐことによる手続きや税金の負担が大きいことから、事業承継を諦めるケースも珍しくありません。M&Aでは大切な企業の後継者を見つけられるだけでなく、経営者にまとまった金額の売却金が入ることや、信頼できる買い手に企業を任せられるといったメリットもあります。

事業拡大

中小企業が買い手としてM&Aを行う時は、自社事業拡大を目的として実行されることが多いです。買い手側の企業買収は、自社にない新しい技術や人材を素早く取り入れることができるため、新たな業界へ事業展開していく際に大きなメリットがあります。

特に海外進出を狙っている企業のケースでは、現地の会社を買収することで、その国の商慣習に合わせたビジネスを効率良く展開できます。また、同業他社を買収することで業界内のシェアを広げるといった目的もあります。

資金調達

売り手側の企業買収では資金調達を目的にM&Aを実行するケースもあります。会社の業績が悪い事業の影響で赤字が続いているが、資金によって立て直すことができる場合は、事業や会社を売却して資金調達を行うことがあります。

また、売り手側から見ると業績の悪い事業であっても、買い手の立場から見ると事業拡大に必要な価値のある事業であるケースも珍しくありません。

中小企業がM&Aで使用されるスキーム

スキームは売り手側と買い手側がM&Aを実行する際に使われる手法のことを指します。中小企業間のM&Aでは、100%株式譲渡、事業譲渡、事業分割、株式交換の4種類が主に使用されると言われています。本章ではそれぞれのスキームの特徴とメリット・デメリットを解説します。

株式譲渡

売り手側が発行する株式を買い手側が買収することで経営権を譲渡するスキームです。中小企業の事業承継では最も多く使用される方法と言われ、売り手側の経営者は売却益として大きな金額を受けることができます。買い手側は100%の株式を所有できるため、経営者以外の株主との買収後のトラブルを防ぐことができます。

また、手続きが簡単であるため、M&Aを実行する企業にとっては迅速にプロセスを進められるメリットがあります。100%株式譲渡のデメリットは、会社の帳簿外の負債や問題を同時に継承してしまうことになるため、売却益の一部から負債となる金額を差し引く必要が出る場合があります。

事業譲渡

事業譲渡は売り手側の事業のすべて、または一部を買い手側の企業に譲渡するスキームです。買い手側は負債や不必要な事業を引き継ぐ必要がないことから、事業の拡大に必要な事業だけを買収することができます。売り手側も自社の短所を少なくできることから、売却先の企業を探しやすいメリットがあります。

事業譲渡のデメリットは手続きに時間がかかるため、M&Aを実行するまでの期間が長いことです。また、株式譲渡に比べると税負担が重くなってしまうことが挙げられます。

会社分割

会社分割は売り手側のすべて、または一部の事業を別会社に移転するスキームで、新設した会社に移転する新設分割と、既存の会社に移転する吸収分割があります。事業譲渡と比べる手続きにかかる時間が少ないことから、買い手側の企業がスムーズに統合までのプロセスを進めることができます。

会社分割のデメリットは、売り手側の株主が買い手側の株を取得することで株主構成が変わってしまい、上場企業の場合は株価が下がるリスクがあります。また、統合のプロセスが複雑であることから、現場の従業員の業務に影響が出る場合があります。

株式交換

株式交換は売り手側の株式を買い手側の株式と交換するスキームで、売り手側が買い手側の子会社となります。買い手側が売り手側の株を取得することになるため100%株式譲渡と似ていますが、組織の再編が行われるためM&Aのプロセスが長期化することが多いです。

株式交換ではM&Aを実行した後も売り手側は別企業として扱われるため、人材やシステムの統合が複雑化しにくいです。また、買い手側の企業は売り手側の企業に対して株式以外の金額を支払う必要がありません。しかし、4つのスキームの中では手続きが最も複雑でコストや時間も多くかかってしまうデメリットがあります。

中小企業がM&Aを成功させる方法

M&Aはすべての企業が満足できる売却・買収を達成できるわけではありません。M&Aではそれぞれの経営者だけでなく、関係者や株主といった人々も大きく関わることになるため、交渉から統合までのすべてのプロセスが複雑になります。特に取引金額を決める際は、それぞれの企業の希望に沿う金額を設定するために緻密な分析や調査が必要不可欠です。本章では中小企業のM&Aを成功に導くためのポイントをいくつか紹介します。

目的を明確にする

M&Aでは売り手側も買い手側の双方とも目的を明確にする必要があります。中小企業の事業承継ではM&A以外にも様々な選択肢があるため、それぞれと比較しながら自社を売却することに対するメリットを明確にする必要があります。M&Aに対する目的が不明確な状態では、相手先となる企業が見つからないことはもちろん、取引金額を交渉する際に納得できる金額が提示されないケースも多いです。

関係者への説明責任

M&Aで買収を実行する際は、相手先の企業の関係者に対する説明責任が必要です。買収した企業には従業員はもちろん、顧客や取引先といった様々な利害関係があります。日本のM&Aに対する認知度はまだまだ低く、買収に対してネガティブなイメージを持っている人も非常に多いです。

買収後の統合を円滑に進めるためには、買収先の企業の利害関係者に対して説明責任を果たし、これまでと同じ信頼関係を築く必要があります。従業員や取引先とのトラブルを抱えたままM&Aを進めると、統合後の大量離職や業績の低下の原因にもなります。

利害関係者の把握

株式譲渡のスキームでM&Aを検討している企業は、売り手側の企業の株主を事前に確認しておく必要があります。中小企業では株主名簿がなく、株主の存在が明確になっていない企業も珍しくありません。

株主の存在が不明確なままでM&Aを進めた結果、経営に関わっていない第三者に支払いを行なってしまうというトラブルの事例もあります。そのため、売り手側の企業の分析を行うデューデリジェンスでは、士業事務所の専門家に業務委託を行い、企業情報や株主名簿を確認しながら正しい株主を明確にしましょう。

価格交渉

M&Aにおいて最も交渉が難航すると言われるプロセスが買収価格の決定です。買い手側は買収価格を売り手側に提示する際に、上限と下限価格を必ず設定しましょう。下限価格は売り手側に対する現在の評価額で、上限価格には統合後に得られる自社の利益を加えた金額を設定するのが好ましいとされています。

価格交渉を行う際は売り手側に対して下限金額を最初に提案し、売り手側の希望と近い金額であれば、円滑に交渉を進めることができます。下限金額は具体的な金額だけでなく、算定した理由や根拠も提案すると交渉を進めやすいです。

仲介会社

M&Aを実行する際は売り手側も買い手側も仲介会社を利用しましょう。仲介会社は相手先の検討から統合までのすべてのプロセスをサポートしてもらうことができます。M&Aには専門的な知識が必要不可欠であるため、経営者や担当者だけですべてを完了することは非常に難しいです。

大手の仲介会社では社内に税理士や公認会計士といった専門家を抱えている企業も多く、デューデリジェンスなども一括して委託することが可能です。業務委託には取引額に応じて手数料がかかる場合が多いですが、M&Aを円滑に進めるためにも積極的に仲介会社を活用しましょう。

中小企業のM&Aで日本経済を活性化させよう!

中小企業のM&Aは近年件数を大きく伸ばしており、事業承継問題の解決はもちろん、事業の拡大や資本調達を目的に行われることも増えています。M&Aが成立すれば双方の事業が大きく前に進むだけでなく、業界全体の活性化にもつながります。

自社の事業の将来に不安を抱えている経営者の方はもちろん、新たな業界へ大きく舵を切りたいと考えている経営者はぜひM&Aを検討してみてください。仲介会社や金融機関などではM&Aに関する無料相談を受けつけているところも多いため、まずは相談から検討してみてはいかがでしょうか。

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