M&Aを実施する企業は各自治体が交付する補助金を受けられる可能性があります。事業承継補助金は支給対象も広く、売り手側の事業承継を支援するものや買い手側の事業拡大を手助けするものもあります。
交付されるには条件があり、事業の将来性や明確な使用目的を軸とした厳正な審査を通過する必要がありますが、支給が受けられればM&Aを進める際の大きなメリットになることは間違いないです。本記事ではM&Aのために交付される補助金の種類と、申請することによるメリットやデメリットを解説します。
補助金とは?
補助金は国や自治体が事業主を支援するために交付するお金です。企業を経営していくと、様々な補助金を受け取れることがあるため、経営者の方は常に自治体が発信する最新情報をチェックし、積極的に活用しましょう。
目的
補助金はそれぞれによって支援する目的が異なります。支給される条件は業種や事業の規模によって異なることが多く、支給される金額も決められた金額が給付されるのではなく、必要経費の何割かが補填されるケースもあります。
支給額
支給額は申請すれば満額で現金を受け取れるわけではありません。支給額は補助率が設定されているケースがほとんどで、申請する補助金によって異なります。そのため、支給される条件を確認する際に、支給額についても理解しておく必要があります。
審査
受給する際は、必ず審査を受ける必要があります。審査では提出した必要書類を専門家が審査し、通過した企業のみが現金の支給を受けることができます。審査の難易度はそれぞれの補助金によって異なりますが、概ね助成金に比べると難易度が高いと言われ、そのため申請したすべての企業に現金が支給されるわけではありません。
補助金のメリット
補助金は事業にかかった経費を補助されるだけでなく、事業価値の向上や企業戦略の見直しといった様々なメリットがあります。申請を検討している経営者の方は、現金の支給だけではなく、自社の価値や事業計画を第三者に確認してもらえるという意味でも活用するメリットがあります。
事業計画の確認
申請には応募申請書・事業計画書・経費明細書などの様々な書類や資料が必要になります。これらの書類を作成するには膨大な時間がかかってしまいますが、自社の事業を見直すという意味では大切な時間です。申請がなければ気づくことができない自社の強みや弱みに改めて気づくことができるチャンスです。
事業の優位性
助成金に比べて厳しい審査が設けられていると言われ、申請したとしても審査を通過できない企業も多いです。逆に言えば審査を通過した企業は経営戦略に対しての将来性や有益性が証明されたということにもなります。特に新規事業を進める際は、事業計画が間違っていなかったことを、確かめることができます。
返済不要
最大のメリットが返済不要で現金が支給される点です。条件を満たして審査を通過した企業に対しては、上限と補助率に応じた現金が支給されます。借りた金額を返済しなければならない融資とは違い、返済不要の現金を支給される点は活用する大きなメリットです。
補助金のデメリット
融資なしの現金を受け取れるだけではなく、自社の事業価値を確認する意味でも非常にメリットの大きい制度です。しかし、申請を行うにあたって、たくさんの労力と時間がかかるといったデメリットも存在します。申請を検討している経営者の方は手続きを進める前に、デメリットもしっかりと理解しましょう。
審査の難易度が高い
助成金に比べると審査の難易度が高く、膨大な時間をかけて書類を用意しても不採用になってしまう可能性があります。そのため、常に不採用とのリスクを理解しながら準備を進める必要があります。
着金が後払い
補助金は企業が提出した事業計画で使用した経費に対して現金が補助される制度です。そのため、M&Aを実行するためのお金をすぐに工面することができないデメリットがあります。また、補助される金額についても、事業計画の完了後に決定されることが多いため、事前に理解しておく必要があります。
収入扱いになる補助金
補助金には収入となるものがあります。収入対象の補助金は会社の収益として計上されてしまうものもあるため、金額によっては納税額が多くなってしまうことになります。収入になるかどうかは、それぞれの要件によっても異なるため、時期などと合わせて必ず事前に確認してみましょう。
情報の取得が困難
補助金は各自治体によって内容が異なるため、情報を探すための時間が取られやすいです。補助金の情報を探す際は膨大な種類の中から自社の事業が対象になるものを探す必要があります。近年は補助金を申請する企業向けのインターネットサービスも増えてきており、地域や条件を絞って抽出することもできるため、積極的に活用しましょう。
M&Aの補助金
M&Aは売り手側の事業承継問題の解決はもちろん、事業拡大や従業員の安定雇用といった様々なメリットがあり、企業の業種や規模を選ばずに活用していきたい企業戦略です。しかし、M&Aを実行するには取引を総合的にサポートしてくれる仲介会社や士業事務所などとの業務契約が必要不可欠で、多額の費用がかかってしまいます。
補助金を利用すれば、業務委託にかかるコストの一部を国が補填してくれるため、中小企業もM&Aを検討しやすくなります。
目的
事業承継補助金は事業の再編や統合を行う中小企業に対して、その取り組みの一部を補助することを目的としています。そのため、M&Aの実務にかかる費用はもちろん、統合や引き継ぎにかかる経費も補助対象になる場合があります。M&Aに対して国が積極的に補助金を支給する理由は、事業の再編や統合によって業界の再編や国全体の経済の活性化を目指しているという目的もあります。
補助金の種類
M&Aに関する補助金は経営革新事業・専門家活用事業・廃業、再チャレンジ事業の3種類があります。それぞれ補助対象がことなるため、申請を行う際は注意が必要です。
経営革新事業
事業承継と統合後の設備投資や販路開拓を支援するための補助金です。補助金の上限は600万円で、1/2〜2/3の補助率となります。M&Aによる経営の引き継ぎだけでなく、他の事業を引き継いで新規創業した場合や親族から経営権を引き継いだ場合でも補助金が支給されます。
専門家活用事業
M&Aを実施する際の仲介会社や専門家に対する業務委託費用を支援するための補助金です。補助金の上限は600万円で、2/3の補助率となります。専門家活用事業は売り手側も買い手側も補助を受けられるため、M&Aを検討している企業は積極的に利用しましょう。
廃業・再チャレンジ事業
事業の引き継ぎや廃業に関する費用を支援するための補助金です。補助金の上限は150万円で、2/3 の補助率となります。経営革新事業や専門家活用事業と同時に申請ができるため、条件を満たしている企業はどちらの補助金の支給も受けることができます。
補助金の対象者
補助金の対象者は地域経済に貢献している優勝企業です。地域経済の貢献とは地域で多くの雇用を生み出していることや、特産品で地域経済を支えているなどがあげられます。資本金と従業員の条件を満たすことができれば個人の開業医なども申請をすることができます。
対象経費
対象となる経費は多岐に渡ります。店舗や事務所の整備にかかる整備費用はもちろん、人件費や広告費なども対象になります。また、企業の売却・買収にかかった様々な手数料の一部も補助を受けることができます。廃業に伴う費用では、店舗や事務所の解体費、現状回費も対象となります。
審査の要件
事業承継補助金の審査は地域に対する社会性や収益性はもちろん、将来性も重要視されます。地域や顧客に対してこれまでどのように貢献してきたかはもちろん、将来どのように貢献していけるかを事業の中で明確に示すことができるかが焦点となります。
補助金の審査を通過するには?
補助金は助成金に比べると審査が難しいといわれています。しかし、申請を行う際に事前に対策を行えば、採用される可能性を引き上げることも可能です。特に事業に対しての優位性をアピールするだけでなく、担当者が興味を引くような資料を用意することも大切です。ここでは補助金の審査を通過するためのポイントを解説していきます。
優位性を提案する
補助金の審査を通過するには自社の事業の優位性をアピールすることが大切です。補助金は同業他社を含めて、たくさんの企業が申請を行います。他の企業に比べて優位性や将来性の高い提案ができれば、補助金の審査を通過する確率も高まります。
関心を引きつける資料
補助金の申請書類を作成する際は、担当者や専門家の印象に残る資料作りを心がけましょう。事業計画がわかりやすく記載されていることはもちろん、写真や文字装飾などを活用することで、担当者の目に止まる資料を作ることができます。資料を通して自社の事業計画に関心を持ってもらうことができれば、審査を通過する可能性もあります。
明確な使用目的
補助金の申請書類は使用目的を明確にすることも目的の一つです。使用目的が明確ではない事業に対して、返済義務のない補助金を支給すると、地域経済にとっても不利益が生じる可能性があります。そのため、申請書を用意する際は自社の事業のどの部分に補助金を充てることになるのかを明確かつ具体的に記載することが大切です。
M&Aを検討している中小企業は補助金を活用しよう!
M&Aに活用できる事業承継補助金は2022年9月時点で、2023年1月31日までの取引が対象になると言われています。M&Aを検討中の中小企業の経営者は、自社の事業の優位性と明確な使用目的を資料として用意し補助金の申請を行いましょう。
補助金の申請については資料の作成などの実務を支援する専用のコンサルタント会社もあるため、支給される金額が高額になるケースでは、業務委託を検討しても良さそうです。