M&AコンサルタントとM&Aアドバイザリーは似ているようで実は異なります。本記事では、M&AコンサルタントとM&Aアドバイザリーの特徴や業務内容を踏まえて、具体的にどう違うかを解説しています。
M&Aコンサルタントとは?
M&Aコンサルタントは、M&Aに関する相談から統合までを手助けする仕事です。M&A仲介会社の中では最も大切といっても過言ではない職種で、企業としての収益の大部分はそれぞれのコンサルタントの能力によるとも言われています。
m&aコンサルタントの特徴
M&Aコンサルタントの業務はM&Aを締結するまでの長い工程である、相談、調査、交渉、誓約後の手続きを一括してサポートすることです。M&Aを進めるには専門的な知識や経験が必要不可欠であるため、中小企業の経営者や担当者だけでは負担が大きくなってしまいます。
コンサルタントは売り手と買い手の間に入りながら、双方の企業が納得する条件を見つけ出し、2つの企業が統合するまでのすべての工程を手助けします。
アドバイザリーと仲介業務
コンサルタントにはアドバイザリーと仲介業務の2種類があります。アドバイザリーは、売り手と買い手の企業が異なる委託先に依頼し、締結に向けての交渉をそれぞれで行います。仲介業務は1つのM&A仲介会社が売り手と買い手の間に入り、中立な立場で締結に向けてのサポートを行います。
アドバイザーとの違いは?
M&A仲介会社では、相談から誓約までの一連の工程をサポートする職種に対してアドバイザーという名称を使っている企業も多いです。アドバイザーは、コンサルタントと同じ意味の職種で、業務内容についても大きな相違点はありません。企業の中にはアドバイザーを別の職種として分けていることもありますが、本記事では同じ意味を持つ職種として扱います。
コンサルタントの業務
業務は大きく分けて5つの工程を行います。 M&Aコンサルタントは、仲介会社やアドバイザリー会社だけでなく、民間の証券会社や金融機関、税理士事務所や会計士事務所といった士業でも活躍していますが、それぞれの業務内容に大きな違いはありません。本章ではM&Aの買い手側を担当した事例を見ながら、具体的な業務内容を見ていきます。
戦略策定
戦略策定は、買い手側の企業の経営戦略を汲み上げ、具体的な買収戦略を策定する業務です。買収候補である企業、事業の種類、買収の手法などを話し合いながら検討し、それぞれの企業にあった具体的な戦略を提案します。
企業の選定
企業の選定は、買収候補となる具体的な企業を探し出す業務です。候補となる企業の経営状況や財務状況を専門的に分析しリストとしてまとめ、交渉相手を選定することになります。
交渉
交渉は買収先となる経営者や株主に対して企業買収の交渉を行います。売り手が交渉に応じた場合は、買収方法や具体的な金額を選定する作業に移ります。買収金額は売り手となる企業の正確な資産価値を評価しなければいけないため、担当者としての知識や経験が最も試される業務です。また、金額の制定後は中立な立場で交渉を行うことになります。
契約
契約は具体的な条件が決まったM&Aを最終合意に導く業務です。双方に対して入念な確認作業を行い、経営権の移転、株主の引き渡しなどの手続きを進めます。企業買収の事例では、双方の意見の衝突が原因となり契約直前で破談になってしまうことも少なくありません。
統合
統合はM&Aを締結した後の企業をサポートする業務です。買収した企業は経営方針や社風の違いはもちろん、人事や情報システムも異なるため、それぞれを統合する必要があります。M&Aを終えた後も事業をスムーズに運用していくためには、統合によって起こる様々な問題を解決に導かなければいけません。
M&Aコンサルタントの費用・手数料の相場
M&Aコンサルタントに業務委託する場合は、着手金、月額報酬、成功報酬といった様々な費用がかかります。コンサルタントへの業務委託では、企業側がかかるコストが高額になるケースが多く、数千万単位の金額が必要になることも珍しくありません。M&Aの費用はそれぞれの会社によっても大きく異なるため、予算や規模に合わせて委託先を選びましょう。
相談料
相談料はM&Aを依頼する前の事前相談にかかる費用です。コンサルタントの多くは相談料を無料としているケースが多いため、初回の相談によって費用がかかることは少ないです。もちろん、相談料として時間単位で手数料をとっている会社もあるため、事前の問い合わせの時点で相談料の有無を確認してください。
着手金
着手金はM&Aを依頼する企業との業務委託契約を決めた際にかかる費用です。中小企業に特化した会社では、着手金も無料に設定しているケースも多く、相談料と同様費用がかかることは少ないです。しかし、会社によっては数十万〜数百万円の着手金が取られることもあるため、相談料と同様に事前に料金を確認しましょう。
月額報酬
月額報酬は、業務委託契約を結んでいる間に月額でかかる費用です。コンサルタント料金という名前を使われるケースも多く、M&A締結までに時間がかかった場合は長期間に渡って多額の費用を支払うことになります。
中間報酬
中間報酬は、売り手と買い手が基本合意した際に支払うことになる費用です。中間報酬の金額は成功報酬の10%前後に設定しているコンサルタントが多いですが、事業規模によっては数千万円の支払いが必要になる場合もあります。また、基本合意後に M&Aが破談になった場合も中間報酬は戻ってこないケースが多いため、注意が必要です。
成功報酬
成功報酬は、誓約した際に発生する費用で、最も多くのコンサルタントが採用しています。中小企業向けのコンサルタントでは、成功報酬以外の着手金や中間報酬を取らない企業も増えてきており、初期コストを押さえられることから経営者が売却を検討しやすいです。
成功報酬の計算式は売り手側の売却額によって手数料が算出されるレーマン式が採用されていることが多く、5億円以下の企業は5%なのに対して、100億円以上の企業では1%の手数料を成功報酬として払うことになります。
M&Aコンサルタントに必要な資格
M&Aコンサルタントは、専門の資格やスキルがなくても転職することができます。しかし、大手コンサルタント会社に異業種から転職している人の中には税理士や会計士などの国家資格を有している人が多い現状もあります。
また、近年はM&Aに関する民間資格も増えてきているため、専門資格を取得しておくと業務を進めていく上で顧客との信頼関係を築きやすいです。本章ではコンサルトに求められる具体的な資格をみていきます。
公認会計士
企業の財務情報の監査を行う士業です。M&Aにおいては戦略の策定や資産価値の評価する業務を主に取り扱うことが多いです。
税理士
企業の税務面のアドバイスや税務申告書を作成する士業です。M&Aにおいても税務面のアドバイスを担当することが多いです。中小企業の経営者は、会計士に比べて税理士に企業買収について相談する人が多いと言われており、持っておくと有利な資格の一つです。
弁護士
企業を経営していく中で、会社法や税法に関するアドバイスを行う士業です。M&Aにおいても法的な観点から様々なサポートを行うことになります。
司法書士
企業の登記業務を行う士業です。M&Aは登記手続きが多くあるため、企業買収に特化した司法書士事務所も増えてきています。
M&Aエキスパート認定制度
日本M&Aセンターと金融財政事情研究会が共同で運営する民間資格です。事業承継のエキスパート養成するための講座や試験を行なっており、中小企業に特化した専門資格としては国内最高峰と言われています。
M&Aスペシャリスト
日本経営管理協会が運営する経営コンサルタントの民間資格です。試験合格後に資格審査委員会に厳格な審査が行われることから、民間資格としても非常に権威があります。
JMAA認定M&Aアドバイザー
日本M&Aアドバイザー協会が運営するアドバイザーの民間資格です。M&Aアドバイザー協会が主催する養成講座を受講し、修了試験に合格した人はJMAA正会員に入会できるため、過去の企業買収の事例やノウハウなどのデータベースを閲覧できます。
業界未経験からコンサルタントに転職するのは難しい?
業界未経験の方がコンサルタントに転職するためには、必ず取らなければいけない国家資格こそないものの、財務・会計に関する専門的な知識や経験が必要不可欠です。そのため、税理士や会計士の資格を有している方は、転職活動を優位に進めることができるでしょう。
また、前職でトップクラスの営業実績を持っている方は、コミュニケーション能力や営業力を評価されて採用される事例もあるようです。異業種から転職して活躍しているコンサルタントの多くは大手メーカー、メガバンク、証券会社といった新卒採用の難易度が高い企業に在籍していたケースが多く、学歴フィルターによる絞り込みも行われています。
M&Aコンサルタントを目指す方は、自分の資格や能力はもちろん、これまでの職歴やバックグラウンドを見直した上で、転職先として検討することをおすすめします。
金融業界からM&Aコンサルタントに転職するには?
M&Aコンサルタントは、中小企業が企業買収を行う際の相談から統合までのすべての工程をサポートする職種で、M&A仲介会社はもちろん、金融機関や会計事務所でも活躍しています。
異業種からコンサルタントに転職するには、財務・会計に関する知識や経験が必要で、税理士や会計士といった国家資格の取得者は転職活動の際も優遇されやすいです。また、前職で高い営業成績をあげた方は、20〜30代の若い年代でもポテンシャルを期待されて採用される事例もあるようです。
ニーズの増加や高額な報酬から転職先として検討する人も増えているM&Aコンサルタントですが、求められる資格や経験のハードルは非常に高いため、金融業界から転職する際も事前の対策を行いましょう。